最後は英国らしくアフタヌーンティーをご紹介します
さて、複数回にわたってお届けしてきたスコットランド編であるが、
最後にとっておきのアフタヌーンティー情報をお届けしてしめくくろうと思う。
それはこの、お店のロゴがやたらオシャレなWillow Tea Roomsという
グラスゴーのブキャナン通り(目抜き通り)に居を構える喫茶店なのであるが、
このお店を説明するためには、まずはとあるグラスゴーの有名人を説明せねばならない。
チャールズ・レニー・マッキントッシュさん
それは、マッキントッシュさんという有名なデザイナーさんである。
(一瞬リンゴ印のコンピューターを想像してしまうが、何の関係もない)
マッキントッシュさんが生まれたころ(19世紀)のイギリスでは、
産業革命で失われてしまった芸術性を取り戻そうぜ!という運動
(アーツ・アンド・クラフト運動)というのが盛んであり、
マッキントッシュさんもよっしゃ!!やったるで!!ということで
建築事務所で一生懸命下積みとして働きつつ、夜のあいだは
グラスゴー芸術学校にせっせと通って建築家として研鑽を積んでいた。
そして、建築事務所で知り合ったマクネーアさん(男性)&
学校の知り合いのマクドナルド姉妹と一緒にABBAみたいな感じで
4人ユニット「ザ・フォー」(すごいストレートな名前である)を結成、
「グラスゴー・スタイル」という、植物と人間が幻想的に絡まり合った
とってもアールヌーヴォーなスタイルを彗星のごとく打ち出し、
あんまり批評家には受けなかったが少数の熱心なフォロワーを生み出した。
そしてこちらもABBAみたいな感じで4人ユニットの中でくっつきまして、
マッキントッシュさんはお姉ちゃんのマーガレットさんと結婚した。
このマーガレットさん、マッキントッシュさんをしのぐ大天才で、
ケルヴィングローヴ美術館・博物館で彼女の絵を見られるのだが、
ビアズリー(オスカー・ワイルドの挿絵をした人)×ポイズン・アイヴィー
という感じの、幻想的で美しいけどちょっと不気味でSFチックな絵に魅せられる。
ちなみに、話がそれてしまうのだが、このマーガレットさんの妹
フランシスさんは姉を超える逸材であったと言われている…のだが
若くして亡くなり、その死後、作品のほとんどを夫のマクネーアさんが
処分してしまった(そしてマクネーアさん自身も建築業を廃業した)ため、
現在はわずかに数点残る作品でその才能を想像することしかできない…。
「ミス・クランストンのティールーム」
ここまでで既にめっちゃ漫画の題材になりそうな人生を送っている
マッキントッシュさんであるが、さらに濃い登場人物が登場する。
もうジャンプの人気投票一気に駆け上がっちゃうレベルの濃さだ。
それが、キャサリン・クランストンさんである。紅茶輸入商の娘で
お父さんやお兄さんにも負けない経営者としての才覚を持っていた
クランストンさんは、当時禁酒運動のなかで流行り始めていた
ティールームに着目、「手軽にくつろげる感じでアートを楽しめる場に
したら、絶対受ける」と確信し、マッキントッシュさんにデザインを一任。
そして生まれたのが…そう、ウィロー・ティールームなのである(バーン)
このウィロー・ティールームは地元民にめっちゃ受け、
こうしてマッキントッシュさんは大成功の人生を送…らなかった。
20世紀に入ってアールヌーヴォー旋風が陰りを見せるとともに
マッキントッシュさんの仕事は激減、それに伴って飲酒は激増、
ドイツで療養しようとするも第一次世界大戦のあおりをくらって
スパイ容疑をかけられてイギリスに戻らざるを得なくなり、
世間から忘れられたままひっそり亡くなった。それでもその間ずっと
マーガレットさんを愛し続け、マーガレットさんも彼を愛しつづけたのだが。
…そして時代は過ぎ、1970年代にグラスゴーが観光に力を入れ始めると
マッキントッシュさんの才能は再脚光を浴びるようになった。それに伴い、
一度はクランストンさんに(晩年夫が亡くなった後)売却されて歴史を閉じた
ウィロー・ティールームも復活し、こうしてお客さんを招き入れているのである。
…と、フレディ・マーキュリーさん並みに密度の濃いマッキントッシュさんの
人生を振り返ったところで、小腹も空いたのでそろそろ着席しよう。
早速「アフタヌーンティーセット(13.50ポンド)」を注文。
ロンドンでアフタヌーンティーを頼んだら絶対どう見積もっても
25ポンドはするだろう。スコットランド物価ありがたい(;;)
あったかい紅茶を飲んでのんびりしていると、
おめあてのアフタヌーンティーセットがやってきた。
素朴な見た目に期待が募るが、さっそくサンドイッチから!
ぱくっと口に運ぶと、パンのふんわりした柔らかさにまず驚く。
というのも、アフタヌーンティーで出てくるサンドイッチ、
けっこうパンがパサパサだったりするのだ(時間が経っているのだろう)。
具のハムやサーモンも新鮮で、ほどよい塩気が食欲を増してくれる。
つづいて中段へ。
ぽてっとしたスコーンもジャムとクロテッドクリームがたくさんついて
口に入れるとほろほろと崩れ、幸せな余韻を口中に残してくれる。
最後に上段。
ショートブレッドはさくほろの理想的な美味しさで塩気もちょうどよく、
バナナケーキはねっちりもっちりとしていて懐かしさがたまらない。
これで2000円ぐらい…なんてお得なんだ…スコットランド…!!
このあと、すっかり得した気分になって、併設の売店で
マッキントッシュさんグッズを買いまくったのであった。
節約?そんな文字は私の辞書にはありません(浪費家気質)
今回の「おいしい度」判定
…ということで、マッキントッシュさんの波乱万丈な人生に
思いをはせながらごはんが楽しめるウィロー・ティールーム、
「☆4(高級レストランレベル)」を進呈したいと思う!!
今回はアフタヌーンティーにしたけど隣のおじさんが食べていた
クラブサンドウィッチもとてもおいしそうでありました。
マッキントッシュさんとの関係もあり、人気店なので、
事前にホームページから予約することをお勧めしますぞ!!
(複数の店舗があるので、ある程度日程に余裕をもって予約すれば
たぶん席がおさえられないということはないはずです!)
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