高齢化を考えるイベントに参加してみた
日本でも問題となっている、高齢化社会の到来。
英国は出生率が「1.9」と日本に比べて高いため、
日本ほど急速に高齢化が進んではないのだが、
それでも2060年には65歳以上人口が25%になる見込みで
(ちなみに、同年の日本の65歳以上人口は40%に到達する見込みである)
ここ英国でも大きな課題となっており、様々なイベントが開かれている。
そんなイベントのひとつ、Positive Ageing in Londonに参加したところ、
英国の食文化・食生活についても考えさせられることになったので、
そのほかの知見とともに、ここに記事として残しておきたいと思う。
「パブが次々に潰れている」
10:30に会場に入ると、すでにたくさんの人がいた。
年齢層が高めの人が多い。ちょこちょこ会話した限り、
地元でボランティアをしていたり、看護師さんだったり、
何らかの形で関心のある方々が集まっているようだった。
11:00。最初の講演が始まった。講師はAlzheimer’s Societyという
アルツハイマー型認知症に取り組んでいる団体の方である。
認知症リスクの35%は食生活や喫煙など、改善しようと思えば
改善できる範囲のリスクなので、気を付けよう、という話だった。
次の講演はOomph!という高齢者向けアクティビティの団体の方で、
ポケモンGoの成功をもとに考え付いたクイズ付きウオーキングで
楽しく運動してもらおうとしている、という話があった。
それに続いて、脳の認知能力を検査するシステムを開発した
MyCognitionという会社の方からシステムの説明があったが、
ここでも健康的な食生活(特に砂糖をあまりとらないこと)の
重要性について言及があった。脳内に英国料理の数々が浮かぶ。
・・・うん、確かに砂糖多めだな・・・。と思いつつ、
続く女性高齢者の共同住宅事業の話に耳を傾ける。
英国には介護保険制度がなく、高齢者がいわゆる介護サービスを利用する際は
資力調査(ミーンズテスト)をクリアすると一定額のお金が支給されるという
仕組みをとっているのだが、老人ホームに入りたい、という話になった場合
このミーンズテストに(原則として)「家の資産額」が含まれてくることになる。
つまり、老人ホームに入るために、自宅を売らなくてはならない、という事態が発生しうる。
これは英国の高齢者にとって、かなり深刻な不安の種となっており、事態打開の一案として
「気心の知れた仲間と家賃の安い共同住宅に住む」という取り組みをしているとのこと。
週1回、みんなで食事を共にするのが社会交流の礎になっているという話があり、
「同じ釜の飯を食う」という感覚は英国でもおんなじだな、ロンドンのパブも
いつもたくさんの人でにぎわっているし、飲食店は社会交流の場でもあるな、
と思っていると…次の講演(孤独解消運動を提唱している方)で衝撃の一言が。
「昨今、パブがどんどん潰れています。
高齢者の方の社会交流の場が失われています」
というのだ!!えっ!?パブといえば英国文化の中心のはずなのに!?
なんで!?ニンジャナンデ!?と思ったが、次の一言を聞いて納得した。
「高いからです。スーパーでビール買った方が安いからです」
そう、確かにそうなのである。
ロンドンの外食にはVAT(消費税みたいなもの)がかかっており、
一回のご飯につき20%の課税がなされるので、パブ含め外食すると
昼食なら15£(2300円ぐらい)、夕食なら30£(4500円)ぐらいはかかる。
ビールやワインは最安値で6~8£(900円~1200円)ぐらいはかかってくる。
一方、TESCOなどのスーパーはVATがかからないので、たとえばビールなら
300ml×20本で12£ぐらい、ワインも1本5£ぐらいで買えてしまう。
医療はNHSで無料としても、介護は基本的には無料にならないわけだから、
それは私が英国の高齢者だったら、スーパーですませてしまう気がする。
このほかにも「自治体の予算カットで図書館がどんどん潰れている」
「隣人の顔を知らない場合が多い」「公衆トイレが少ない(←本当そう)」
などなど、興味深い話が沢山あったし、続くAge UKの健康指標の話も
グループディスカッション(下記画像)も色々考えさせられるものがあり
盛りだくさんな会合だったが、終わってみるとパブの話が一番心に残った。
つまり現在の英国の高齢者(の食生活)をめぐる問題は
①外食が高いので、スーパーで買う(=孤立しがち)
②(特に男性の場合)作り置きのおかずを買うことが多い
③作り置きのおかずはピザとか肉の丸焼きとか「健康的でない」
④体調を崩してしまう(が孤立しているのでサポートを得にくい)
という流れになっているようなのだ。ちなみに、講演では言及がなかったが
英国のスーパーは基本的に無人会計(商品にバーコードがついていて、
それをレジでひとつひとつ自分で押し当てて総額を払うシステム)なので、
そういう意味でもスーパー中心の生活だと孤立しがちになるのだろう。
英国と日本、さまざま制度に違いはあれど、「孤独」という問題に
どう対処していくかが大きな課題になっているのは同じである…
と、アパートでひとりさびしくミカンを食べつつ思ったのであった。
なんとご飯が出るのです
…と、すっかり真面目なトーンになった今回だが、
もちろん(?)ご飯紹介はさせていただく!!というのもこの会合、
なんと無料なのにご飯付きだったのである(うれしい)。
しかも「Healthy Eating」の具体例ということだったので、
すごく楽しみにしていた(仕出し業者のドライバーの方が道に迷って
30分遅れたので、余計に期待が募った、というのはあるが)。
そんなHealthy Eatingの具体例たる料理はこちら!!
…少なくとも、英国料理ではない(-w-;)
明らかにとるてぃ~やな雰囲気にちょっと先制攻撃を食らいつつ
おそるおそる食らいついてみると…意外にも、おいひい!!
じゃがいも、トマト、バジル、ピクルスが入っているのだが、
ピクルスがいいかんじに酸っぱく、全体を引き締めており、
ほくほくしたジャガイモとぷちゅっとしたトマトも塩味が効いて、
バジルのさわやかさが口の中に残る。とてもおいしい。
お肉は全く使っていないので、確かに健康的である。
…が会場に来ていた皆様には量が足りなかったらしく、
ひとりあたり4~6個ぐらいモリモリと食べていた。
気持ちはすごくわかるが、「健康的な」量ではない…ような…
(といいながら自分もムシャムシャ食べるのでありました☆)
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