名探偵の名を冠したパブ
前回の記事でも触れた通り、私はホームズが大好きである。
そんな私にとって、ロンドンでずっといってみたかった場所のひとつ、
それが、「シャーロック・ホームズ」というパブであった。
シャーロック・ホームズのイベントがロンドンで行われた際に
アメリカなどから取り寄せられた小道具の数々を一同に集めたパブで、
トラファルガー広場のすぐそばにあるということで常に賑わっている。
一度予約なしで出向いたら2時間待ちと言われ、すごすごと退散したので、
現地の友人と総勢7人で、今度の夜、予約して臨もう!ということになった。
悲劇の予兆ーデポジットの存在
早速ホームページから予約を試みたところ、
「35(7×5)£のデポジットを前日までに支払ってください」
というクレジットカード支払い画面に移った。
何回かロンドンでレストランを予約したことはあったが、
これは初だったので、友人①(南アフリカ出身、ロンドンに長く在住)に
なんですかねこれはと聞いたところ、パブだとそういうこともあるよ、
お会計の時にデポジットは返却してもらえるよ、とのことだったので、
やっぱり人気あるお店なんだな、と思いつつ、支払いをすませた。
PM5:30、到着
…当日。直前に現地上司から「君の英語は意味不明。きちんと勉強し直すべき」
と言われ、正直めちゃくちゃへこんでいたが、いよいよ憧れのパブに行ける!
ということで気持ちを奮い立たせた(今思い出してもへこみますのうorz)。
7人のうちふたりが直前に急用でこれなくなってしまったので、
5人でパブに向かい、17時半に到着。2階にある予約席に案内してもらった。
2階にはなんとホームズの書斎が再現されており、否が応でもテンションが上がる。
雰囲気もしっとりしていて、1階のどやどやした喧騒とはまったく無縁、素敵な空間だ。
ウェイターさんが「ワインがおすすめですよ」と言ってくれたので、まずはワインで乾杯。
食事は何を頼もうか、と話したが、ウェイターさんが忙しそうに動き回っていて
視線があわなかった(英国では遠くから呼びつけるのは失礼とされている)のと、
なにより英語力の向上について友人たちに教えを乞いたくてしょうがなかったので、
会話に熱中することにした。…といっても、スピーキング力も乏しい(泣)ため、
ついていくのがやっとで、必死になっていると、ふと友人②(アメリカ人)が叫んだ。
「しまった、もうこんな時間!!夫が帰ってきちゃう。悪いけどもう帰るね」
PM7:30、退店、そして…
時計を見ると、いつのまにか19時半になっていた。
(しまった、話に夢中になってウェイターさん探せなかったな、ご飯食べたかったな)
と思ったが、友人たちに教えてもらった勉強法を早く試したいとも思ったので、
ウェイターさんを(相変わらず飛び回っていたので、やっとのことで)捕まえ、お会計をお願いした。
ワイン一本で20£とのことで、デポジットを持ってくるからちょっと待っててね、という。
しばしの後、ウェイターさんがばつの悪そうな顔で戻ってきた。
「お酒だけじゃなく、食事も頼んでもらわないと、デポジットを返すことができないんです。
合計金額が35ポンドに到達するように、食事を頼んでくれたら、デポジットを返します。」
えええ!?と思いながら友人①をちらりと見ると、やはり驚いた顔をしていた。
友人②が「いやでもそういう制度なのだったらそう最初に言うべきですよね?
2時間待っててその間一切食事のオーダーをとりにこなかったのに、そんな理屈はおかしい」
と反論してくれ、ウェイターさんは「ちょっともう一回確認しますね」と戻っていった。
そこから15分ぐらい待っただろうか?友人①は憤慨しており、友人②は遅れる旨連絡をいれており、
友人③・④も困ったことになったなあという顔で黙っていて、とても居心地の悪い時間だった。
やがて、スッと背筋の伸びた感じの女の人がやって来た。支配人とのことで、早口にこう言った。
「ウェイターは次のように言っている。
・七人で予約を受けていて、あなた方が他の二人を待っていると言ったので様子を見ていた。
・食事のオーダーをとろうとしたが、あなた方がずっと話しているので話しかけられなかった。
文句を言われても、結論は変わらない。デポジットを返すことはできない。」
いや、他の二人を待っているなんて言ってないし、ウェイターさんはずっと他のテーブルの方にいて
全然こっちに来てくれなかったんですよ、と、友人たちが(私の代わりに)言ってくれたが、
「私はスタッフを信じているので。とにかく返せませんから」の一点張りでらちが明かず、
結局、デポジットは戻ってこなかった(ワインのお会計はそれはそれで別に払わされた)。
友人は気落ちしないで、と励ましてくれたものの…
友人に迷惑をかけてしまったこと、自分ではなにも言い返せなかったこと…。
帰り道、家に帰った後、布団に入った後、いろいろな感情が頭のなかで渦巻いた。
入店時にきちんと、友人ふたりが来れなくなったと言っていればよかったのかもしれない。
もっとウェイターさんに視線を送って、食事を頼みたいという意思を示せばよかったのだろう。
いやでも、なんでウェイターさんは「二人を待っていると言われた」なんて嘘をついたんだろう。
話し込んでいたかもしれないが、ちょっと声をかけてくれてもよかったんじゃないか。
いや、そもそも私の英語力が低いからこんなことになったんじゃないか?
いや、とはいえ、一言でも、謝罪の言葉があってもよかったのではないか…?
こうしているいまも、どうすればよかったのか考えている。
ただ…ただひとつ確かなことは、もうあのパブには行くことはないだろう、ということだけだ。
自戒を込めて
というわけで、もっとしっかりしないとダメだな、という自戒も込めて、
今回は久しぶりの「☆1」としたい。そのあと他の友人にも聞いたところ
デポジット制のありかたはまちまちのようなので、必ずしも今回のように
「お酒と食事を頼んでデポジット額まで到達しないとキャッシュバックなし」
という制度のパブばかりではないと思うのだが、もし英国に来られて、
あのパブに行かれることを検討される際は、ぜひ参考にしていただければ幸いです…。
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